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対談

 

これからの家族像を求めて
「樋口恵子の追求シリーズ?」

 

「ファミリーサ一クル」を支える*
人々の意識とシステム −スウエーデン−

 

樋口恵子VS訓覇法子

 

福祉先進国として紹介されることの多かったスウェーデンだが、当然ながら多くは制度や福祉現場の紹介であり、そのシステムを作り、支えてきた国民性については、今一つ情報が乏しかった。
スウェーデン在住20年。スウェーデンの人と風物を詩情豊かに伝える『スウェーデンの四季暦』を著書に持つ訓廟法子さんに、人々の暮らしの実際と国民性をお聞きする。樋口恵子さんが長年疑問に思っていた「スウェーデン神話」の真偽についても突っ込んだ質問が続いた。

 

個の自立が生む親子の親密さ

樋口 訓願さんがスウェーデンにいらしたのは1976年とお聞きしました。当時の日本は、高度経済成長真っ只中で、78年に出た厚生白書が「日本ではお年寄りの直系家族との同居率が高く、これは福祉予算の大きな含み資産である」などとして、年寄りと同居しているお嫁さんの介護力を「評価」もし、頼っていた。つまり、日本は同居率が高いから、諸外国とは違う家族福祉でやっていけるという自信に満ちていた時代です。
その頃、日本をあとにしてスウェーデンにいらっしゃって、まずスウェーデンの家族について、どのような印象を持たれましたか。
訓覇 個が非常に確立しているということは感じました。では、個の自立に伴って家族断絶があるのかなど初めは思ったんですが、やがてそれもないことがわかってきました。
スウェーデンでは、成人した子供が親と同居しているということは、まずありません。日本人は、スウェーデンの高齢者を「子供と住めなくてかわいそう」と言うかもしれませんが、スウェーデン人なら、「子供と住まなくちゃならなくてかわいそう」と言います。といっても、”住まなくちゃならない人”ではなくて、実際は”住みたい人”で、ほとんどの人は住みたくないと思っています。
ただ、クリスマスとかイースター、誕生祝いなどには家族はすぐに集まり、盆暮れにしか帰らない日本の親子と比べたら、非常に連絡が密です。電話で話すのはしょっちゅうとして、近所なら週末に会いますし、また長い夏の休暇には、サマーハウスで家族で一緒に過ごす人が多いです。昼間の行動は別々ですが夕食は一緒に食べます。

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